半導体次世代技術「チップレット」関連銘柄として注目のアオイ電子。赤字予想の業績とは裏腹に株価は大きく上昇しており、その背景について考察していきます。
香川県高松市に本社を構える独立系の電子部品メーカー。半導体製造の後工程を担う半導体パッケージングサービス(OSAT)を主に展開しています。前工程に注目が集まる中、「日本最後のOSAT」と呼ばれることも。
OSAT(オーサット)は半導体製造の後工程(組立・テスト)を専門とする企業のこと。一般的に前工程を担う企業をFoundary(ファウンダリー)と呼び、後工程を担う企業をOSATと呼びます。
Foundaryの代表格が台湾のTSMC。微細化のニーズと共にここ数年は前工程に注目が集まっていました。
順位 | 企業名 | 国 |
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1位 | ASE | 台湾 |
2位 | Amkor(アムコア) | アメリカ |
3位 | JCET | 中国 |
4位 | TFME | 中国 |
5位 | PTE(パワーテック) | 台湾 |
18位 | アオイ電子 | 日本 |
OSAT企業の世界ランキングは上図の通り。台湾、アメリカ、中国の上位5社で世界シェアの7割を占めると言われる中、日本トップのアオイ電子は18位と出遅れていることが分かります。
日亜化学工業、ミツミ電機、日清紡マイクロデバイスなどの電子部品メーカーが主な取引先となります。後工程部分を受託し、上記のような商品を提供しています。
海外売上比率は約10%。日本国内を主戦場としていることが分かります。
スマホ向けICやLEDが好調だった15/3期をピークに業績低下傾向。コロナ禍でデジタル機器・家電が一時回復も、その反動もあり24/3期は赤字に転落見込み。
業績だけ見ると株価上昇の理由は見当たらないけど…?
最終赤字転落見込みでEPS/ROEともに低下傾向。資本政策に関する記述も特に見当たりません。
今流行りの資本コスト対策で株価が上がってるわけではないんですね。
有利子負債以上に手元の現金を有しており、実質無借金経営。業績の低迷により近年はフリーCF悪化も、財務は至って健全です。
利益の状況、配当性向などを総合的に判断した上で安定的な配当の継続に取り組むとしています。
2023年は中盤まで低パフォーマンスも10月以降大きく上昇し、日経平均を大きくアウトパフォーム。
業績は低迷してるようですが、なぜ株価上昇?
チップレットとは、機能の異なる小さなチップをブロックのように組み合わせて、一つのチップのように扱う技術。半導体前工程の微細化が進む中、それに変わる技術の一つとして注目されています。
アオイ電子はチップと入出力部分をつなぐ配線の層を多層化できる技術を開発。これがチップレットにおける重要な技術であるとし、注目を集めています。
アオイ電子は2023年12月に行われた主要閣僚や官民の代表が集うフォーラムにて、今後4年間で350億円を投資し、後工程の生産受託工場を設置する計画を公表。新技術の確立が加速するとの思惑から、注目度が高まっています。
経済産業省が2月22日に公表した「国内投資促進パッケージ」に沿ってアオイ電子を支援していくとしており、上記の投資には政府の支援も含まれるものと考えられます。
岸田首相もアオイ電子の半導体パッケージ投資に言及するなど「国策銘柄」であることも株価上昇の要因であると考えられます。
足元の業績は関係なく、中長期での爆発に期待が集まっての株価上昇なわけですね。