2023年過去最高益予想で配当も上方修正を発表した伊勢化学工業。ペロブスカイト太陽電池銘柄として注目を集め、株価も大幅に上昇したものの、その後は一転して急落。今回はそんな伊勢化学工業の株価変動要因を考察していきます。
1948年設立、ヨウ素の生産を主に行う企業。日本は世界有数のヨウ素生産国であり、中でも伊勢化学は国内トップクラスのヨウ素生産量を誇ります。AGCが親会社(株式50%超)であり、主要株主に三菱商事(10%超)という株主構成になります。
かん水を原料とするヨウ素は日本、アメリカ、チリが主要産出国。AGC、三菱商事からかん水を仕入れ、伊勢化学がヨウ素・天然ガスを生産。それを各ユーザーへ販売しています。
殺菌剤、X線診断の造影剤、スマホ・テレビ・PCの液晶用偏光フィルム、シートベルト・エアバッグ用繊維の安定剤、甲状腺ホルモン剤などの医薬品。
現在主力の「シリコン太陽電池」から、次世代太陽電池として注目されているのが「プロブスカイト太陽電池」です。ペロブスカイト層を塗って製造する工法であり、材料の一つとしてヨウ素が使用されます。
都会でも柔軟に設置できる太陽電池として、再エネの切り札として多くの注目を集めています
積層セラミックキャパシタ(MLCC)の素材として使用されます。MLCCは主に村田製作所、TDK、太陽誘電等のメーカーが製造しており、あらゆる電子機器に搭載されます。
海外比率は4割弱。金属化合物は9割以上が国内向けになりますが、ヨウ素はアジア・北米・欧州と幅広い国と地域に展開しています。
コロナ禍で液晶向けの需要が拡大。液晶向け一服後も、ヨウ素市況の上昇、円安の恩恵もあり堅調な業績が続きます。
2017年は営業利益率が大幅に低下。ヨウ素国際市況下落の影響を大きく受けた結果となります。
2017年のようにヨウ素価格次第で影響を受けることは認識しておいた方がよさそうです。
ROEは6%超を目安。企業価値向上の取り組みにはあまり積極的な印象はありません。
有利子負債額以上に現金を有しており実質無借金経営となります。営業CFも毎年黒字続きで、いずれの指標も盤石で財務は健全です。
足元の現金減少は生産設備新設・更新のため。手元の現金で行っており、特に問題はありません
安定的な配当を基本方針とし、経営基盤の強化と合わせて総合的に判断するとしています。定量的な目安は示していませんが、24/12期も増配予定で6期連続増配となります。
過去にも減配は複数回あり、業績次第で減配リスクはあります。株価高騰で配当利回りは下がってるので配当目的には不向き
年初から2024/06/19までのパフォーマンスは上図の通りです。年初の8,550円から6/14には39,500まで4.5倍以上に急騰。急上昇の反動か、その後一気に急落していますが、未だ年初来で+180%以上の上昇となっています。
ペロブスカイト太陽電池関連株として注目を集めたことによるものです。同太陽電池の普及に向けて官民協議会を立ち上げるなどの報道から、国策銘柄として今後大きく成長するのではとの期待から大きく株価を押し上げています。
ヨウ素のトップシェアメーカーとして、ペロブスカイト太陽電池の話題が出るたびに好材料と捉えられていました
6月中旬以降にかけては株価が大幅下落。これは東京証券取引所が臨時措置を実施したことによるものです。同社株の信用取引による新規の売り付け及び買い付けに係る委託補償金率を上げる臨時措置を実施すると発表したことで、取引負担増を嫌気され株価が大幅に下落しています。
一時期はPER40倍超え。現在は27倍とグロース株として考えるのであれば、決して高すぎる水準ではない所まで落ち着いています