【読書要約】世界インフレ時代の経済指標
今回はエミン・ユルマズ氏の著書「世界インフレ時代の経済指標」を読み終えてのまとめ記事となります。経済指標の着眼点が知りたいという方にぜひおすすめですので、ぜひご覧ください。
なぜ、この本を手に取ったかというと、以下2点が大きな理由です。
①最近、YouTube等でエミンさんを知り、その発言内容や着眼点に非常に興味を持っていたこと
②多くの経済指標を目にする中で、帯の「いま読むべき指標は12個」というフレーズに惹かれたこと
日本では30年ぶりのインフレで、日々さまざまな経済指標が発表される中、「結局何を見て、何を確認すれば良いの?」と思っていただけに、「12個」という数字が非常にキャッチーに感じました。
エミン・ユルマズ氏
ご存知の方も多いかもしれませんが、トルコ出身のエコノミスト。日本には留学で来られ、日本語学校に入学。その後、東京大学、同大学院を経て野村證券で勤務されています。YouTube等にも多く出演されていますが、日本語ペラペラです。
何よりエミンさんの特徴は、日本株信者であること。(著書内でも、ご自身で信者と表現されています。)今後30年かけて、日経平均は30万円まで上昇すると発言されています。
多くの人が日本を悲観的に語る中、ポジティブな面に多く注目されていること。ましてや日本人ではなく、外の世界を知っている方がそのように発言されており、話に聞き入ってしまうポイントです。
世界インフレ時代の経済指標
今世界で起きているインフレは、通常それらを引き起こす「需給」の問題ではなく、「構造的」な問題であると指摘しています。
その構造的な問題は3点あります。
①量的金融緩和のつけ
リーマンショック後からコロナウィルスによるパンデミックを経て、アメリカ経済は多額の金融緩和を続け、バランスシートを膨らませてきました。その後、引き締めに入る訳ですが、まだ以前の状態には程遠く、金融市場には大量のお金が残ったままである。
②新冷戦
米中の冷戦が始まっている。地中学リスクを考え、製造業の拠点が中国から移ろうとしている。これまで、低コストで製造ができる中国だからこそ、製品を安く販売することができたが、その流れが転換期を迎えている。
③日本の財政赤字
先進国内でGDP比で圧倒的な債務を抱える日本。そのほとんどが国内向けの債権のため、有事の場合は円を刷れば良いので問題はない。だが、放置するわけにはいかず、インフレの進行により、債務が目減りすることを政府は歓迎。今後もこれを好機に捉え、インフレを促進することが考えられる。
これらの理由から、インフレになることを前提にした上で、デフレマインドから脱却し、その相場にあった適切な行動を取っていくことが求められます。
以下の通り、相場は常に循環しています。
金融相場(低金利・株高)
↓
業績相場(低金利・株高)
↓
逆金融相場(金利上昇・株安)
↓
逆業績相場(金利上昇・株安)
今がどの状況なのかを正しく捉えるためにも、以下の経済指標を正しく理解することが重要です。※ネタバレになってしまうので、代表して5つの指標の概要のみ記載しております。詳細気になる方は、ぜひ本の方をお求めください。
12の経済指標
各国から指標が出されますが、まず見るべきは米国指標。世界最大の経済大国であり、アメリカで起きることが、全世界の指針となるからです。
その後に、日本、中国、欧州。欧州はとりわけドイツに注目。指標ごとに見方を変えることが重要です。例えば、製造業の指数であれば、米国よりも中国。製造業に限ると、米国以上に中国で起きていることが、世界情勢に与える影響が大きいため。
代表的な指標をピックアップしました。
雇用統計
毎月第一金曜日に発表される、景気の動向を占う上で重要な指標。特に重要なのは「非農業部門雇用者数」、「失業率」、「労働参加率」。
新規失業保険申請件数
毎週発表されるため、雇用統計以上にタイムリーな指標。1週間単位で判断せずに、数週間のトレンドで判断することが重要。
小売売上高
アメリカのGDPの7割が個人消費だからこそ、個人消費の状況を表す重要な指標。物価を含めた実質値ではなく、名目値で発表されるので注意が必要。
GDP
景気の遅効指標。年率3.3から5%伸びが最適とされる。
個人所得・支出
米国の家計は借金体質。だから金利にセンシティブ。
以降、詳細は著書にてご確認ください。
まとめ
30年間デフレ状態にあった日本国民において、インフレは未知の体験。リーマンショック時、ほとんどのエコノミストが、これから起きることを正しく捉えることができていなかったように、未来を予測するのは不可能。
だからこそ、客観的な指標を自分なりに理解し、できる最善の策を講じていくことが重要。その上で、本書ではまずは理解すべき12の指標に関して解説しています。
個人的に良いなと思ったのが、各指標の判断数値が示されていること。◯%が景気後退、景気回復の基準といったように示されているのが非常に分かりやすいです。
ただ、一回読むだけでそれらの基準を頭に入れるのは難しいため、辞書的に一冊手元にあると非常に有意義ではないかと考えています。