ネットキャッシュ倍率とは?
割安/割高を測る企業価値の考え方について教えてほしい!
企業価値の算出方法は多岐に渡りますが、今回はその中の一つの「ネットキャッシュフロー倍率」についてご説明します。
今回は参考文献として以下の書籍を参考としています。気になる方はぜひ手に取って読んでみてください。
企業価値とは
企業価値とは企業本来が持つ価値を定量的に示したものです。この企業価値の算出方法にはいろんな考え方がありますが、大きく分けると「事業価値」と「財産価値」を足し合わせたものと考えることができます。
投資の世界で企業の価値を示す「時価総額」は、最終的にこの企業価値の値に収まっていくとされています。つまり、正しく企業価値を算出できれば、現時点の時価総額が割安か割高かを評価できるというわけです。
事業価値
その企業が事業活動によってもたらされる価値を示します。これには現時点の稼ぐ力のみならず、将来的に稼ぐ力の総和であり、複雑な計算のもと表されます。
「ほんとうの株の仕組み」の中では営業利益×10倍した値をざっくり事業価値と定めています。算出方法は一つではなく、なぜ上記の算出方法を取っているかは今回の本題と逸れるため、ぜひ本著をご確認ください。
よく活用されるのが「DCF法」ですが、非常に複雑な計算を要します。
財産価値
一方の財産価値とは会社がもっている現金や土地、有価証券などの資産のことで、事業活動を行う上で直接必要としない資産を示します。
財産価値は簿記上の貸借対照表(B/S)を見ることで求めることができますが、より厳密に求めようとするとそれだけでは足りません。土地の価値などは購入当時の価値(簿価)と現時点の価値(時価)が異なるからです。
ただ、今回はそこまで踏み込みません。企業価値は事業価値に加え、上記の財産価値によって決められるということをまずはご認識ください。
例えば以下のような2社があったとします。どちらの方が企業価値が高いと言えるでしょうか?
◆A社
事業価値:100億円
財産価値:100億円
◆B社
事業価値:100億円
財産価値:10億円
事業価値が全く同じと仮定(本来であればあり得ませんが)した場合、B社の方が企業価値が高いと考えることができます。そのため、企業の財産価値を把握しておくことが重要と言えます。
財産価値の調べ方
決算資料から
上図の通り、企業の決算資料の中から「現金及び預金」や「投資その他の資産」などの項目から今手元にある現金の総額や土地の総額などを求めることができます。
IR BANK
もっと簡易的な方法としてIR BANKなどのWEBサイトを活用して調べることも可能です。決算短信ほど細かく調べることはできませんが、ざっくりと現金等がどのくらいあるか等を調べるには非常に便利です。
ネットキャッシュ倍率
ネットキャッシュ倍率とは
前置きが少し長くなりましたが、本題のネットキャッシュ倍率について説明します。位置付けとしては上図の通り、財産価値の割安度を測るための一つの指標と考えていただければと思います。
ネットキャッシュ倍率は時価総額÷ネットキャッシュで求めることができます。
通常は1倍を超えます。高ければ高いほど、持っている財産価値以上に企業価値(≒事業価値)が高く評価されていると考えられます(逆も然り)。
仮に1倍を下回る場合は企業の財産価値以下の値で時価総額が評価(放置)されているということになります。
ネットキャッシュ倍率が低い企業は?
東洋経済の特集でネットキャッシュが多く、PBRが1倍割れている企業のトップ50社が掲載されていました。その中でもネットキャッシュ倍率が低く、個人的に気になった会社が次の5社です。
会社名 | ネットキャッシュ倍率 |
---|---|
東建コーポレーション | 0.92倍 |
エスケー化研 | 1.18倍 |
新日本建設 | 0.92倍 |
村上開明堂 | 1.23倍 |
日東工器 | 1.27倍 |
低いとどうなる?
低いからと言って急に何かが変わることはありません。何かしらのアクションがないと株価(時価総額)は低いまま放置され続けてしまう可能性があります。
ただ、これらの企業は現金が多い企業ですので何かしらのアクション(成長投資や株主還元の強化)を起こしやすかったり、現金が多いことでアクティビストに狙われたりすることがあります。
そうなると一気に株価が高騰する可能性もありますので、今後も注目していきたい銘柄の一つであると個人的には考えています。
まとめ
- 企業価値は大きく分けて事業価値と財産価値に分けられる
- 事業価値とは事業活動によって稼いだ(稼ぐ)価値
- 財産価値とは現金や土地、資産などの価値
- 財産価値の割安度を測る指標の一つがネットキャッシュ倍率
- ネットキャッシュ倍率が低い企業はきっかけ一つで株価が急騰する可能性も
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