【比較】人気高配当株の稲畑産業を長瀬産業との対比で特徴を深掘り
高配当&株主優待銘柄としても人気の稲畑産業。国内の化学専門商社は稲畑産業と長瀬産業の2トップと言われています。今回はあえて競合の長瀬産業と比較することで、稲畑産業の特徴を深掘りしていきたいと思います。
A〜Hの投資分類はこちらを参考にしてください。
成長性こそ高くないものの、参入障壁の高い業界において安定した業績・配当を誇る企業です。
稲畑産業
老舗専門商社
実は私も勘違いしていたのですが、読み方は「いなばた」産業です。化学製品を主に扱う専門商社。設立は1918年ですので、設立100年を超える老舗企業です。
競合の長瀬産業は1832年設立の「超」老舗企業であることからも、なかなか新規参入が難しい業界であることが分かります。
住友化学の持ち分法適用会社から外れる
2024/1/5に住友化学が持分法適用会社の稲畑産業の一部株式売却を発表。これにより、住友化学の持ち分法適用会社から外れることとなります。
販売から製造へ
自動車向けから、先端産業、食品、OA機器向けなど、向け先や用途は多岐にわたります。
売上の半分近くを占める合成樹脂セグメントでは、商社としての卸販売だけではなく、自社工場も有しています。仕入れた素材を、自社工場にて付加価値を加えた上で販売するという、メーカーとしての側面も持っているんですね。
長瀬産業も同様にメーカー化を促進しているようで、IR資料で「製造」と「販売」の割合を記載していました。
「販売」から「製造」へ、この業界の一つのトレンドと言えそうですね!
過去10年の業績/財務/配当
利益率上昇傾向
営業利益率低く感じるかもしれませんが、専門商社という業態柄概ね平均程度。四季報で前後の会社見てましたが、後述の長瀬産業も含め、各社1〜3%におさまる企業が多いです。その中でも、右肩上がりに成長しているのは好感がもてます。
卸販売では商材を自社の商品を持たないため、差別化がしづらいです。そのため、メーカーとしての役割を持つことで、利益率を改善しているわけですね。
後述しますが、ROEは非常に高水準。EPSも右肩上がりに増えているのは安心材料ですね。
財務良化傾向
自己資本比率は同業他社が30〜50%程度が多いため、高い方と言えそうです。年々上昇する一方で、有利子負債比率は減少傾向。もともと悪かったわけではありませんが、良化傾向で特に問題は無いです。
累進配当
2022/3期から2024/3期までの中期経営計画にて、「累進配当」とする方針を発表。調査時点(2023/09/27)では配当利回り3.70%ですが、今ほど株価高くなかった2022年には5%を超える時期もあるなど、代表的な高配当銘柄です。
また、株主優待(QUOカード)も行っており、株主還元姿勢が高いことは、高配当株投資する上では安心材料と言えますね。
定める期間中は、減配せず、配当維持か増配に限定するという配当方針です。業績に関わらず、最低限配当が維持されるため、投資家にとって非常に魅力的な方針です。
長瀬産業と比較
トップ1、2
長瀬産業が売上はトップとなるが、稲畑産業もそこまで大差はなく、利益率はやや劣るといった水準。自己資本比率や有利子負債比率などの財務面はほぼ同じと、非常に似た指標であることが分かりますね。
その中でも、稲畑産業の特徴となる部分を3つピックアップします!
特徴①:資本効率
ROE(自己資本利益率)が過去から稲畑産業の方が高く、効果的な経営ができていることが分かります。
ROEは①収益性(売上高利益率)×②資産の効率性(総資産回転率)×③財政状態(財務レバレッジ)の3つに分解することができます。①と③はさほど差がないため、②の資産の効率性で優れていると考えることができますね。
実際、総資産は長瀬産業の方が倍近くあるため、少ない資産(建物や設備など)で利益を生み出すことができており、経営の上手さと言えるのではないでしょうか。
特徴②:海外比率
海外比率自体は両社50%弱とほぼ同程度です。一方で、海外の内訳を見ると違いがあります。上図を見ると、長瀬産業が欧米含めて満遍なく展開しているのに対し、稲畑産業はほぼほぼアジアに占めていることが分かりますね。
これだけで良し悪しの判断は難しいですが、両社の戦略として、アジアに集中している稲畑産業と広く展開している長瀬産業と違いがあるのが特徴です。
特徴③:配当利回り
両社、株主還元に積極的であることに変わりはない(両社株主優待もあり)ですが、上図の通り配当利回りには差があります。一時5%を超えている年もあり、高配当株投資家として人気の所以と言えそうですね。
株価
青線:稲畑産業 ピンク:日経平均 緑:長瀬産業
1年前からの比較になるが、ほぼほぼ同じような値動きですね。今は株価もだいぶ上がっており、少し手が出しにくい雰囲気です。個人的には配当利回り4%に載るあたりを一つの目安としたいと思ってます。
まとめ
両社とも設立100年を超える老舗企業。その2社がトップ1,2の座を誇ることからも、新規参入がしづらい業界であることが考えられます。
突出した業績があるわけではありませんが、安定した業績、財務、さらに株主還元姿勢の高さから、高配当銘柄として人気なのがうなづけます。
今後を占う上では、「販売」から「製造」へのシフト。海外比率の向上に着目して見ていきたいと思います。
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